ファンシーヤーンとは?種類や名称一覧、毛糸の特徴、販売店などまとめ

ファンシーヤーン種類一覧

ファンシーヤーンの種類や特徴、販売店などまとめました。

毛糸やニットに関する記事を見ていると、ファンシーヤーンという言葉が出てきますが、ファンシーヤーンってイマイチよくわからないって方はいませんか?

  • ファンシーヤーンってどんな糸のこと?
  • 種類はどんなのがあるの?
  • どんな風に使えばいいの?
  • どこで売っているの?

わたしは20年以上、婦人服や子供服のニットデザイナーをしてきました。

工業毛糸の糸やさんで働いたこともあるので、一般の方より少しは専門知識があります。

そ・こ・で!

ファンシーヤーンの種類や名称、特徴、使い方、販売店についてまとめました。

ファンシーヤーンについて詳しく知りたい方は参考にしてみて下さい。

ファンシーヤーンとは?

ファンシーヤーンとはどんな糸なのか?どこで作られるのか?

形状変化のある糸のこと

ファンシーヤーンとは、意匠糸や意匠撚糸とも呼ばれ、上の画像のように概ね見た目に形状変化のある毛糸を表します。

英語でもFancy yarnと言います。

紡績または撚糸で作られる

ファンシーヤーンは大きく分けると2種類あります。

  • 紡績段階で加工した毛糸
  • 撚糸段階で加工した毛糸

意匠糸や意匠撚糸とも呼ばれますが、どの段階で加工したのかによって意味合いが少し異なります。

  • 意匠糸(いしょうし)=ファンシーヤーン全般
  • 意匠撚糸(いしょうねんし)=撚糸で作ったファンシーヤーン

紡績段階で加工したファンシーヤーン

紡績でファンシーヤーンを作るには、トップ(わた)の段階でアンゴラや、ミンク、フォックスなど他の動物の毛を入れたり、ネップ(羊毛などの小さい粒状の毛玉)を入れたりします。

犬とかタヌキでも、何の毛でも少し入れただけで羊毛だけとは表情が変わるが、現在は動物愛護の問題で何でも入れられるわけではないそうです。

紡績のファンシーヤーンの多くは形状的には比較的地味な仕上がりなので、ファンシーヤーンと呼ぶよりも、他の特徴的な名前(アンゴラ混とか、フォックスヤーンとか、カラーネップとか・・・)で呼ばれることが多いです。

撚糸段階で加工したファンシーヤーン

撚糸でファンシーヤーンを作るには、メインの糸(花糸とか飾り糸とか浮き糸言われる)の他、芯糸や押さえ糸など、2本以上の糸を(1本を緩めたり、1本を強く引っ張ったり)巧みに使って形状変化を持たせて作ります。

形状的に派手な仕上がりで見た目にわかりやすい物が多いので、一般的にファンシーヤーンと言うと、撚糸タイプを指すことが多いです。

紡績から撚糸まで一気に出来る機械もある

もともとは、紡績段階か撚糸段階のどちらかで加工しましたが、技術が進化した現代では、紡績から撚糸まで一気にやってしまう機械もあります。

ファンシーヤーンの多くは愛知県一宮市で作られる

紡績工場でする撚糸とは別に、ファンシーヤーン用の撚糸機で加工するので、ファンシーヤーンを専門とする撚糸工場があります。

ファンシーヤーンの撚糸工場の集まる産地は、日本では尾州産地です。

産地の豆知識

ファンシーヤーン 紡毛 梳毛
日本 尾州 泉州 尾州
イタリア トスカーナ プラート ビエラ

尾州(びしゅう)とは、愛知県一宮市、稲沢市、津島市、愛西市、江南市、名古屋市及び岐阜県羽島市、各務原市(かかみがはらし)の周辺。

泉州(せんしゅう)とは、大阪府南部の地域、堺市、岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、和泉市、高石市、泉南市、阪南市、忠岡町、熊取町、田尻町及び岬町周辺。

ファンシーヤーンの種類

ファンシーヤーンの種類をご紹介します。

ファンシーヤーンはかなり多くの種類が存在します。

また、仕上がりは同じくモールと表現するものだとしても、作られる工程が違ったり、同じものでも呼び名が様々あったりもして複雑です。

すべてを書ききるのは難しいのですが、目立つものだけご紹介します。

ループヤーン・リングヤーン・ブークレヤーン

ループが出来た糸のこと。ループの大きさは大小様々あり、小さいものはブークレヤーン、とくに大きいものをジャンボループと呼びます。

リングヤーン

タムヤーン

ループヤーンをカット(=シャギーヤーン)して、さらに起毛してモヘヤみたいにモクモクとふんわりさせた毛糸。

混率にモヘヤが含まれる含まれないは関係ない。

起毛自体はループヤーンに限らす、リリヤーンやストレートヤーンにもかけられますが、タムヤーンはループヤーンにかけたものを言います。

下の画像はループヤーンではないですが、起毛をかけるローラーの参考画像です。

華道の剣山みたいですね。昔は植物のチーゼル(アザミ)で行われていました(布地では今も行われている)。

スラブヤーン

太いところと細いところがある糸のこと。

スラブヤーン

ノットヤーン

節が出来た糸のこと。

こちらは偶々2本の糸が絡み合った多色の毛糸ですが、単色でも1本でもかまいません。

下の画像はアートヤーンですが、同じことです。

ネップヤーン

小さい粒上の毛玉(ネップ)を混ぜて紡績したもの。

 

カラフルなカラーネップの毛糸が多いですが、下の画像のように1色くらいしか入れないものもあります。

上の画像はシルクネップが入っています。

カールヤーン(スナールヤーン・角糸)

手元に糸がなくお借りした画像で小さいのですが、トゲトゲしているのが見えますでしょうか?

下の画像はアートヤーンですが、やっていることは同じです。

服飾学校では角糸(つのいと)と教わりましたが、(わたしの居た)ニット業界ではカールヤーンと呼ばれていました。

調べてみると、角糸は織り物業界では使われているようでした。

スナールヤーンも同意みたいですが、(撚糸屋さんとか、工場さんに近い方は使う言葉なのか?)わたしの居た環境では聞いたことがなかったです。

シャギーヤーン

ループヤーンをカットして毛足を出したもの(さらに起毛するとタムヤーンとも呼ばれる)。

シャギーヤーン

 

ファーヤーン

元糸の手法は問わず、毛皮(ファー)のように見える毛糸の総称。シャギーヤーンやモールヤーンでもファーみたいに見えればファーヤーン。

こちらのファーヤーンはモールヤーンタイプかな?

ファーヤーン

こちらのファーヤーンはシャギーヤーンタイプかな?

シャギーヤーン

リリヤーン(リリアンは間違い)

リリヤーンは筒状編み機「ニッチング」を用いて紐状にメリヤス編みされた糸のこと。

リリヤーン

子供の頃遊んだ「ニッチング」のおもちゃの商品名は「リリアン」となっていますが、リリーヤーン(Lily yarn)からきているので、リリーヤーンまたはリリヤンが正しいです。

海外でもLily yarnと呼ばれます。

針の数は変えられるので、太さも様々調整できる。

リリヤン

出来上がりの糸を潰せばテープ状の糸にもなる。

ラッセルヤーン

ラッセル編機で作った毛糸。こちらの画像のようにハシゴみたいなテープ状のものがわかりやすいが、テープじゃないものもある。

モールヤーン・シェニールヤーン

一般的にもこもこ芋虫みたいな毛糸のことを指して、モールヤーン、シェニールヤーンと呼ばれます。

モールヤーンの元糸はループヤーンだったり、ラッセルヤーンだったり、リリヤンだったり様々です。

一般的には総称として、もこもこ芋虫みたいな毛糸のことを指しますが、本来はもこもこ芋虫に限ったものではありません。

飛びモール・ポンポンモール・数珠モール・提灯モール

ところどころにモールを入れるものを、飛びモールとか、ポンポンモール・数珠モール・提灯モールと言います。

厳格には違うのか?正確なところはわたしも知りません(モール屋さん!もし見ていたら、お手数ですがお問い合わせからお知らせいただけるとありがたいです)。


ポンポン 大 7.7番 280gかせ (数珠モール)

スラリットモール

スラリットヤーンを使用したモールの総称。

こちらの画像はたまたま飛びモール形状ですが、「スラリットモール」はスラリットを使用したモールの総称なので、形状はこちらに限ったものではありません。

スラリットモール

スラリットヤーンとは、ナイロンの不織布のカットテープのこと。

スパンコールヤーン

スパンコールを加えて撚糸した糸です。

スパンコールヤーン

糸を生産するときには、スパンコールの大きさやスパンコールのピッチは様々設定できます(あまり大きすぎるスパンコールは機械に入らないとは思いますが)。

豆知識
スパンコールの材質は2種類あります。

  • ポリエステル
  • 塩ビ(塩化ビニル樹脂)

ポリエステルは石油系ならドライクリーニング可能(パークロエチレン系は不可)ですが、

塩ビだと溶けることがありますし、アイロンでもツヤが消えたり、亀甲スパンコールが平スパンコールになります。(インドとか中国とか)海外のものですと、塩ビ(塩化ビニル樹脂)素材のものもあるので注意して下さい。

 

ビーズヤーン

ビーズを入れながら撚糸した糸です。

スパンコールと同様に、糸を生産するときにはビーズの大きさや、スパンコールのピッチは様々設定できます(あまり大きすぎるビーズは機械に入らないとは思いますが)。

ファンシーヤーンの使い方

ファンシーヤーンは、作品すべてをファンシーヤーンだけで編む場合もあるし、部分的にファンシーヤーンを使うこともあります。

  • 袖口だけ裾だけ切り替えて
  • 編み込みの柄だけに使う
  • 他の毛糸と引き揃えて使う

編み物以外のハンドメイドでは織り物に使う、アクセサリーに使うなど。

簡単なものならタッセルやポンポンにするだけ、ラッピングのリボンにするのも可愛いですね。

ファンシーヤーン 通販

ファンシーヤーンは、普通の毛糸屋さんの中にも紛れて普通に売っていますが、とくにファンシーヤーンに特化しているお店屋さんもあります。

今回は3店ご紹介します。

  • MONDOFIL(モンドフィル)
  • ENOP WISE
  • STELLA(ステラ)

モンドフィル

ファンシーヤーンと言えば、ニット業界でもMONDOFIL(モンドフィル)さんが有名です。

世界の様々なファンシーヤーンを集めて販売していますので、ご存知でない方は一度、見てみて下さい。

MONDOFILをみる

 

ENOP WISE

シャネルのツイード生地にも使われるリントン社のファンシーヤーンを小売りしている輸入生地のお店ENOP WISEもありました。

わたしが勤めていた婦人服ブランドでもリントン社の生地を使った高級スーツが人気でした。(時代がかなり昔ね(笑))

ちょっと入れるだけですごーく雰囲気が出るんですよね。

輸入生地のENOP WISEをみる

 

STELLA

岐阜(尾州)の生地屋ハンドメイド素材 STELLAさん。

尾州だけにファンシーヤーンを使ったツイード生地や、ファンシーヤーンそのものも沢山販売しています。

海外のファンシーヤーンの強い特徴が苦手な人は、日本のファンシーヤーンの方が可愛らしくて好きかもしれません。

ハンドメイド素材 STELLA をみる

 

ファンシーヤーンまとめ

ファンシーヤーンの種類や名称、特徴、使い方、販売店についてまとめました。

ファンシーヤーンの名称は様々な呼び方があり、私は紡績や撚糸の専門家ではないので、もしかしたら正確な表現が間違っているものも、中にはあるかもしれません。

とは言え、業界でも話は通じる程度にはあっていますので、皆さまの参考になれば幸いです。

 

 

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