毛糸の種類とは?名称一覧と特徴(原料・紡績・形状・太さで分類)

毛糸の種類一覧とその特徴などを詳しく説明します。

わたしは20年以上、婦人服や子供服のニットデザイナーをしてきました。

工業毛糸の糸屋さんで働いたこともあるので、一般の方より少しは専門知識があります。

そ・こ・で!

毛糸の種類と特徴などを詳しく解説しますが、今回はちょっと専門的?です。

>> 初心者さんの毛糸選びはこちらの記事が参考になります。

毛糸の種類はどんなのがあるの? かなり詳しく知りたい!と、思っていた人は参考にして下さい。

毛糸の種類とは?

毛糸の種類は作る工程で何をするかで変わります。

4つの視点で分類

概ね以下の4つのいづれかで変わります。

  • 原料の違い
  • 紡績の違い
  • 太さの違い
  • 形状の違い

羊毛から毛糸になる工程で変化

毛糸を作る工程を知るとわかります。ちょっと専門的なので面倒くさい人は飛ばして下さい。

原料の違いが変わるのはここで

混紡(こんぼう)=異なる原料や異なる色の繊維を混ぜてメランジなど混紡糸用のワタにする。
↓  ↓  ↓
カーディング(カード)=クシでほぐして繊維の方向を整える。➜紡毛スライバー
スライバー(ウール篠)=ロープ状の羊毛を表す。
↓  ↓  ↓
紡績の違いが変わるのはここで
コーミング(梳かす)=スライバーをクシで揃えつつ、短繊維、ネップ、ゴミなど取り除く。高品質なウール梳毛は2回は梳かす(紡毛は入らない工程)。➜梳毛スライバー。
↓  ↓  ↓
前紡(紡ぐ準備)=ダブリング(多数重ねる)とドラフト(伸ばす)を繰り返し、太さにムラのないスライバーに仕上げる。箸の太さくらいまで細くする。
↓  ↓  ↓
太さの違いが変わるのはここで
精紡=前紡工程で作ったスライバーを最終番手の太さに伸ばす。➜粗糸=ロービングヤーン
↓  ↓  ↓
1回目の撚糸=粗糸に撚りを加える(Z(左)撚りが基本)。➜単糸
↓  ↓  ↓
2回目の撚糸=単糸を合わせて撚りをかける(主にS(右)撚り)。➜双糸(一般的なストレートヤーンの基本)
*現代では精紡から撚糸まで一気にできる機械(サイロスパン)もある
↓  ↓  ↓
形状の違いが変わるのはここで
 意匠撚糸=完成した糸にさらに加工して形状変化を持たせる。➜ファンシーヤーン

*現代では精紡から意匠撚糸まで一気にできる機械(トライスピン)もある。

原料による種類と特徴

原料は大きくわけて天然繊維と化学繊維があります。

天然繊維 動物性繊維 羊毛、獣毛(カシミヤ・アンゴラ
・モヘア・アルパカ・キャメルな
ど)、シルク
植物性繊維 綿、麻(リネン・ラミー・ヘンプ
・ジュード・マニラ麻など)
化学繊維 再生繊維 レーヨン、キュプラとか。(*)
半合成繊維 アセテート、トリアセテート、
プロミックスなど。(*)
合成繊維 アクリル、ポリエステル、ナイ
ロン、ポリウレタンなど

(*)原料はセルロース系(コットンやパルプなど)、タンパク質系(牛乳とか大豆など)がある。

ちょっと専門的な表をはさみましたが、実際に手芸で毛糸を選ぶときには気にしないでOK。

原料は混ぜることが出来るので、羊毛・獣毛だけでなく他の素材も入れられます。

混紡(こんぼう)=異なる原料や異なる色の繊維を混ぜてメランジなど混紡糸用のワタにする。

*フィラメント糸の場合は混繊(こんせん)という。

最終的な毛糸になるまでの間にも交撚(こうねん)などでも素材は混ざるので、毛糸を分類するときに植物性とか動物性とか化学繊維とかでは分けきれません。

むしろ以下の分類で見たほうがいいでしょう。

  • ウール・ウールアクリル
  • 獣毛混ウール
  • モヘヤ混
  • コットン・コットン混
  • 麻糸
  • ペーパーヤーン

ウール・ウールアクリル

ウール、ウールアクリルは、一番ポピュラーなタイプです。梳毛・紡毛のどちらもありますが、スルッとした梳毛タイプが多いです。

ウール100%

ウールアクリル

獣毛・獣毛混ウール

獣毛混でも梳毛・紡毛ありますが、市販の毛糸になっているものは、特徴を生かしたボワッとした紡毛タイプで、メランジ調のものが多いです。

単色のものもありますが、梳毛と区別がつきづらいです。

ツイード=スコットランド羊毛で太い紡毛糸を毛染めして手織りにした紡毛織物。見た目の表現としてメランジ調のような意味で使うことも多い。

メランジ=フランス語で「混合する」。スウェットで言う霜降り。

モヘア混

モヘアも獣毛のひとつですが、毛足が長くちょっと他の獣毛とは違うので、別枠で見たほうがわかりやすいです。

太さは様々ありますが、手芸用だと細いのが多いですね。

こちらはちょっと太めの並太で使いやすそう。

コットン・コットン混

手芸用ではコットン100%や綿麻混が多いですが、コットンアクリル、コットンナイロンなどもあります。

コットン100%

コットン麻(リネン)

コットン麻の糸を扁平にして、さらにギマ加工(擬麻加工)をしてあります。こちらは糸自体に麻が含まれていますが、ギマ加工する糸に麻が含まれている必要はありません。

ギマ加工(擬麻加工)=麻のような風合いにする加工。こんにゃく、レーヨンなどをのり状の物質にして、繊維間を膠着(こうちゃく)させて固くします。(環境汚染の問題があり、現代では生産出来る場所が限られている。)

麻糸

麻紐のような毛糸もあります。バッグやプラントカバーなど雑貨向けです。

ペーパーヤーン

ペーパーヤーンは本当に紙のものペーパーヤーンと呼ばれますが、紙のような感じの糸を表す総称のことが多いです。いずれもセルロース系(パルプ、綿、笹、麻、竹などの植物)原料で出来ています。

レーヨンタイプ

一番ポピュラーなのはエコアンダリヤですね。

レーヨンはセルロース系の再生繊維です。元は天然繊維ということ。

和紙タイプ

特殊糸

少し前に大流行したTシャツヤーン。カットソーをカットしたテープ状の毛糸。可愛いけど重くて使いづらい。

近年のトレンドヤーンのひとつが「中綿入りリリヤン」。商品名が「ノットヤーン」となっていますが、ファンシーヤーンでいう名称としては「中綿入りリリヤン」形状で「ノットヤーン」ではありません

最近、人気があるのがポリエステルリリヤンタイプ。軽くて編みやすくバッグなど雑貨に人気。セーターにしても実は可愛い。

紡績による種類と特徴

紡績では毛紡(梳毛紡、紡毛紡)、綿紡、絹紡、麻紡、化学繊維紡績があります。それぞれ機械が異なるので工場さんや産地が異なります。

毛紡以外はあまり話に上がることはないので、毛紡(梳毛紡、紡毛紡)だけわかっていればOKです。(前項の原料の調合も紡績のうちですが、ここでは紡毛と梳毛についてだけ)

カーディング(カード)=クシでほぐして繊維の方向を整える。➜紡毛スライバー
↓  ↓  ↓
コーミング(梳かす)=スライバーをクシで揃えつつ、短繊維、ネップ、ゴミなど取り除く。高品質なウール梳毛は2回は梳かす(紡毛は入らない工程)。➜梳毛スライバー。

スライバー(ウール篠)=ロープ状の羊毛を表す。

>> 梳毛・紡毛とは?

紡毛紡績

コーミングを挟まないで短い繊維が入っていたり、向きが揃わないまま紡いだ毛糸。撚りが甘く太い、毛羽のある糸が出来ます。

見た目と触り心地は、ボワッとした膨らみのある毛糸です。

ウールもありますが、カシミヤとかアンゴラとか獣毛混の毛糸に多いです。

梳毛紡績

羊毛をコーミング(クシで解く)して短い繊維を取り除いたり、繊維の毛並みを揃えてから紡いだ毛糸。撚りが強く、細い艶のある糸が作れます。

見た目と触り心地は、ツルッと滑らかな毛糸です。

カシミヤは紡毛引きが多いのですが、梳毛引きもあり、それはそれは滑らかな毛糸になります。

太さによる種類と特徴

精紡で粗糸の太さを調整して撚糸して最終的な太さの毛糸が上がります。

太さの違いが変わるのはここで
精紡=前紡工程で作ったスライバーを最終番手の太さに伸ばす。➜粗糸=ロービングヤーン
↓  ↓  ↓
1回目の撚糸=粗糸に撚りを加える(Z(左)撚りが基本)。➜単糸
↓  ↓  ↓
2回目の撚糸=単糸を合わせて撚りをかける(主にS(右)撚り)。➜双糸(一般的なストレートヤーンの基本)
*現代では精紡から撚糸まで一気にできる機械(サイロスパン)もある

手芸では極太・並太・中細などタイプで分類

毛糸の太さタイプは11分類くらいある。

超々極太>超極太>極々太極太並太合太中細>合細>極細>超極細

メーカーによって採用しているタイプ名が異なります。

必ず入っているのは以下6つ

超極太>極太並太合太中細>極細

さらに各社で必要なものをプラスして、だいたい7~8分類くらいに分けているメーカーが多いです。

注意点として、太さの基準はメーカーによって異なります。

正確なものではないので、近年ではラベル表示していない毛糸も多いです。

>> 毛糸の太さの種類とは? 

プロは番手(世界基準の太さ目安)で分類

太さタイプ名がラベルに書いてない場合は「メーター÷グラム=番手」で太さを確認します(プロは最初から番手を使います)。

>> 番手とは?

形状による種類と特徴

毛糸は最初は撚りが入らない状態で上がりますが、その後の撚糸工程で形状に変化が出ます。

 意匠撚糸=完成した糸にさらに加工して形状変化を持たせる。➜ファンシーヤーン

*現代では精紡から意匠撚糸まで一気にできる機械(トライスピン)もある。

ちなみに撚糸のときに複数の素材を合わせることを交撚(こうねん)と言います。

>> ファンシーヤーンをもっと詳しくみる

ロービングヤーン(撚糸前の粗糸)

ロービングヤーンとは、本来は撚りを入れていない無撚糸の毛糸のことですが、販売している毛糸はごく軽く撚りが入ってることが多いです。

商品によっては撚りがそこそこ沢山入っているものでも、商品名として「ロービング」という名前がついていることがあります。

ロービングヤーンの太さは、0.5~1番手くらいの超極太毛糸であることが多いです。

ストレートヤーン(撚糸加工済み)

基本の毛糸はストレートヤーンです。コードヤーンと言う人も。

ロービングヤーンを伸ばして撚って1本の毛糸にすると、ストレートヤーンの単糸。

多くは単糸と単糸を撚り合わせて双糸(2PLY)のストレートヤーンになっています。

3PLYや4PLYも同様で、何本か撚ってもストレートヤーンはストレートヤーンです。

太さは超極細から超極太まで様々あります。

撚糸の強さも甘撚り~強撚まであります。

ファンシーヤーン(意匠撚糸加工済み)

ファンシーヤーンは、概ね見た目に形状変化のある毛糸を表します。ファンシーヤーンを作る撚糸を意匠撚糸と言います。

形状も様々ですが、太さも様々あります。こちらはファンシーヤーンの参考です。これがすべてではありません。

>> ファンシーヤーンをもっと詳しくみる

まとめ

毛糸の種類とその特徴を説明しました。

毛糸ってどんな種類があるんだろう?って思っていた方の参考になれば幸いです。

初心者さんが編みやすい毛糸の種類については別ページで解説しています。

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