撚糸(糸の撚り)の種類や名称、特徴についてまとめました。
毛糸やニットに関する記事を見ていると、撚糸に関する専門用語が出てきて、どういう意味かな?と思いつつ、雰囲気で読み飛ばしてしまうことってありますよね?
- 撚糸と紡績糸って?
- 甘撚りと強撚って?
- 意匠撚糸(ファンシーヤーン)って?
わたしは20年以上、婦人服や子供服のニットデザイナーをしてきました。
工業毛糸の糸やさんで働いたこともあるので、一般の方より少しは専門知識があります。
そ・こ・で!
撚糸の種類や名称、特徴についてまとめました。
紡績って?撚糸って?意匠撚糸(ファンシーヤーン)ってどういうの?と、気になっていた方は参考にして下さい。
撚糸とは?
撚糸(ねんし)とは?糸に撚りをかけることです。
よく皆さんから疑問にあがる「撚糸と紡績の違い」と、「撚糸の目的」を説明します。
撚糸と紡績糸の違いとは?
よく皆さんが疑問に感じるのが、「撚糸と紡績の違い」です。
- 紡績(ぼうせき)とは糸を作る(紡ぐ)こと
- 撚糸(ねんし)は、紡績する工程や紡績後に関わらず、糸に撚りをかけること。
撚糸の目的は?
糸に強度をもたせ、扱いやすくするため撚糸をかけます。
原料をそのまま揃えただけの糸(粗糸)では、ボソボソバラバラになって切れやすいです。
こちらはカシミヤの粗糸。ぼわぼわしているのが見えますでしょうか?
ほとんど綿のような状態で、このままだと切れやすいので、撚りをかけて扱いやすくします。
下の画像は、ウールの粗糸(割り箸ほどの太さ)を、機械で撚糸しているところです。
糸の撚り方向「S撚り」「Z撚り」とは?
「S撚り」「Z撚り」とは、糸の撚り方向を指すものです。単糸の場合は通常、左撚りとなり、これを「Z撚り」と言う。双糸を撚り合わせるときは、右撚りとなり、これを「S撚り」と言う。
単糸は左撚りで「Z撚り」という
紡績の工程「精紡」で作られる単糸は、基本的にすべてZ(左)撚りです。
(やろうと思えば、紡績糸でもS(右)も出来るし、フィラメント糸は最初からS撚り(右撚り)もある)
(単糸=1本のみで出来た糸、双糸=2本で出来た糸)
デメリットは片面組織のメリヤス編みの場合は斜行しやすいこと。(*斜行とは編み上がりが斜めに歪むこと)
両面組織のゴム編み、ガーター編み、もしくはかぎ針編みなら斜行は出ません。
双糸は右撚りで「S撚り」という
一般的な毛糸はS撚りがほとんどです。
Z撚りで単糸にしたあと、2本の糸を撚り合わせた糸(双糸)にします。単糸のときとは逆にS(右)撚りにします。
撚りが両方から入る双糸になる事で、糸が安定して斜行しづらくなります。(*斜行とは編み上がりが斜めに歪むこと)
このため、単面組織のメリヤス編みで編んでも斜行しません。
*ただし、片側の撚りが強いなどバランスが悪いときは斜行します。
糸撚りの強さ「甘撚り」「強撚」とは?
糸の撚糸は、糸の仕上がりを考えて、撚り回数を調整します。
Z撚り(左撚り)で18回、S撚り(右撚り)で20回など好きな回数(必ず偶数)で撚ります。
紡績糸の場合、通常1インチ(2.54cm)間に18~21回ほどの撚りを入れます。
18回以下を「甘撚り」、21回以上を「強撚」と言います。
撚り回数が少ないものを「甘撚り」、撚り回数が多いものを「強撚」と言います。
撚り回数が少ないものを「甘撚り糸」
撚り回数が少ないものを「甘撚り」と言います。
甘撚り糸の特徴は、撚り回数が少ないと柔らかい糸になります。
タオルなどは通常甘撚り糸が使われます。
通常18回以下の撚りのものを「甘撚り糸」とします。
デメリットは撚りが甘いと強度がなく切れやすいことです。
撚り回数が多いものを「強撚糸」
撚り回数が多いものを「強撚」と言います。撚り回数が多いとコシが出て硬い糸になります。
強撚糸の特徴は、シャリッとして清涼感が出るので、夏糸などに使われることが多いです。
通常21回以上の撚りのものを「強撚糸(きょうねんし)」とします。
デメリットは撚りが強いと斜行(*)しやすいことです。(*斜行とは編み上がりが歪むこと)
意匠撚糸(ファンシーヤーン)とは
意匠撚糸とは紡績済みの2本以上(メインの浮き糸と芯糸と押さえ糸など)の糸を撚り合わせ、特殊な表情を持たせた糸のこと。
ロービングヤーンや、ストレートヤーンを元に、他の糸を合わせて撚ったり、スラブにしたり、リングループを作ったり、モールを作ったり、リリヤンにしたり、概ね見た目に形状変化のある毛糸となります。
こちらはアートヤーン(手紡ぎ)の画像ですが、やっていることは同じです。
引っ張った芯糸にメインの毛糸を絡ませていきます。
意匠撚糸はファンシーヤーンとも言いますが、厳密に言うとファンシーヤーン(意匠糸)となると意味の幅が広くなります。
広義ではファンシーヤーン(意匠糸)は、撚糸で表情を出した糸とは限らず、紡績段階で加工した糸(スラブにしたり、ネップを入れたり)も含まれます。
撚糸についてのまとめ
撚糸(糸の撚り)の種類や名称、特徴についてまとめました。
以上、皆さまの参考になると幸いです。